*スクリーンのスノーグローブ  MARY POPPINS Scene534*

冬の日、大金持ちにもらわれて行った根性の悪い子は、雪の上に愛するテディ・ベアのボボを捨ててしまいます。「ボボに逢いたい‥」少年時代の夢にうなされて、豪邸の寝室で目を醒ましたのは強欲老人バーンズ社長。そのベッドの下には、割れたスノーグローブがいっぱい!。…TVアニメーションと言うより、アメリカきってのエンターテイメントショー「シンプソンズ」の一場面。御存知、名作「市民ケーン」のパロディーですよね。大富豪ケーンの言葉「ローズバット」の謎を探る映画です。その秘密はこのシーンに隠されていたんですが、でも実はもっとフカーイ意味も隠されているのを御存知でしたか?。ひょっとするとバーンズの「ボボ」もその意味深なところまでひっかけてるかも‥。ともあれ、この有名な言葉「ローズバット」とともに主人公のスノーグローブが割れるオープニングシーンは、スノーグローブの神秘的な雰囲気とノスタルジックな感じを効果的に使った映画史に残る名場面です。映画、特にミステリーの中にスノーグローブが登場したら大抵この映画のオマージュと言っていいかも知れません。

 

スノーグローブは、光を通して輝くもの。ですから光の魔術・映画によく似合うのか、映像の中ではこんな風に沢山登場します。いちいち出て来た映画をあげるのもバカみたい。水に沈んだオブジェは、占いの水晶玉のように、不思議な彩を放ち、そこで小さな物語世界を作ってしまうもの。

 

さて、そこで今回取り上げたのはこのなんの変哲も無いスノーグローブです。なかに寺院らしい建物が見えますが特に目立つものでは無さそうです。でもコレを見て、アレ、と思った方がいたら感激です。これは、スノーグローブといえば忘れてならないもう一つの映画、ディズニーのミュージカル「メリー・ポピンズ」のものなんです。この映画であらためてスノーグローブを知ったという人、絶対多いはず。ジュリー・アンドリュース扮するメリー・ポピンズが子供達に、2ペンスでもこんな使い方があるのよ、とセント・ポール寺院で鳩の餌を売るおばあさんの歌FEED THE BIRDSを聞かせるシーンで出て来ました。ガラスのグローブを振ると寺院の周りをスノーにかわって鳩の群れがいっせいに漂います。水流を鳥の飛行に見立てる仕掛けに魅せられて、こんなグローブがどこかにないかと捜しまわった事のある人、いませんか?これが幻のそのグローブなんですよ。

 

種明かしをすれば、コレ実は映画メリー・ポピンズを記念して発売されたものなんです。「市民ケーンのグローブ」というのもヴィンテージであるのですが、作品中に登場したものとは違っているようです。ところが、さすがディズニー、こちらはちゃんと映画のプロップ(小道具)のレプリカになっているんです。早速グローブを振ると‥ご覧のように鳩が飛び立ちます!

 

映画ではここからシャーマン兄弟の美しいバラードにコーラスが重なり、幻想的なセントポール寺院の聖堂へオーバーラップしていくんでしたね。このシーンはディズニー映画ならではの美しさでした。スノーグローブを使って鮮やかにファンタジーの世界の入り口を開いた手腕は見事でした。今ではクリスマス頃のCMなどで、ファンタジックな映像のモチーフにスノーグローブがたくさん登場してきますが、それもこれもこの名場面があったからではないでしょうか‥。「シンプソンズ」だってちゃんとやってくれれます!。メリー・ポピンズならぬ「シェリー・ボビンズ」がバートたちを寝かすためにいきなり取り出したのが、モーの酒場のスノーグローブで、そこから酔っぱらいバーニーが雪の降るなか、2ドルで酒を‥と訴える心暖まる(?)歌になるという、さすがツボを押さえた抱腹絶倒のパロディでした。

 

メリー・ポピンズは1910年のイギリスが舞台。20世紀初頭にはスノーグローブはヨーロッパの市民階級の人々に愛されていましたから、ロンドンのバンクス一家のような銀行員の家庭を象徴する飾り物として、よく風俗を表わしているわけです。このグローブ、こうして置いてあるだけだと何の特徴もないもので、これまでのディズニーグローブ中でも異色。大抵の映画関連のグローブは名場面かキャラクターかタイトルロゴで出来てるものなのに、そういう点でも異色。ところがひとたびその正体が分かると、知ってる人にはいぶし銀どころかグローブとして燦然と輝く意味がでてくるという、まさにコレクションの為のグローブであるわけなんです。よく見えているようでも気付かない事があるものです‥とメリー・ポピンズが囁いているようです。

※このスノーグローブは販売はしておりません。個人的なコレクションですのでお問い合わせいただきましてもお譲りすることは出来かねますのでご了承ください。
 



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